北原進先生の「百万都市 江戸の経済」(角川ソフィア文庫)を音読した。
私は、基本的に読書は音読で行っている。音読はインプットとアウトプットを同時に行えるという素晴らしい機能がある。読み終えるのに少し時間がかかるが、その分、頭だけでなく身体全体で本と向き合うことができるので、私自身はこの読書スタイルが一番合っている。
本書は江戸の経済、文化、社会をわかりやすく解説してくれる。
我々が時代劇などで目にする江戸の町がより鮮明に映し出され、江戸がいかに「庶民の町」であったかがわかる。消費経済においては、想像よりもはるかに進んでおり、世襲制度で硬直した武家社会よりも柔軟で活気に満ちていたかがわかる。
そもそも江戸は、関東の覇者であり、徳川家康入府前の支配者である北条家の時代から、年貢(税金)の配分が四公六民であり、領民に優しい治政が為されていた。これは江戸幕府にも引き継がれ、徳川吉宗の代まで続く。(吉宗は五公五民に年貢を引き上げる)。
そのため、江戸には他の領地よりも、人が集まりやすく、また、江戸幕府開闢以降は、全国の藩の出先機関である江戸藩邸があるために、さらに人口が増え、人口が増えると消費の需要が高まり、経済発展が起こるという好循環が生まれた。
考えてみると、江戸時代の不可思議さは、本来、支配階級である武士社会が世襲による硬直化した社会であるのに対して、被支配階級の方がある種の自由さがある社会であったことだ。
明治維新が多くの下級武士の不満が最後の引き金になったのは、支配階級の方が硬直していたからであろう。また、維新後、急速に欧米化できたのは、そもそも「庶民」の方が柔軟に、さらにアイディア豊富な社会を強かに築いていたからのように思う。
本書は、学問書であるけれど、そうした「庶民」の息吹を感じる一冊であった。
ぜひご一読いただければと。
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