「ASH・・」
激しい閃光の中、鶴姫は立ち尽くしていた。敵である豊臣秀頼、千姫、真田十勇士の清海、由利の姿はない。結局何者かわからなかった二人の冥界の者の姿も消えていた。恐らく最後の衝撃波で空間移動したのであろう。冥界特有の重く湿った空気と低く垂れ下がった雲、荒れた大地の上に存在するのは鶴姫とASHだけである。
「よく我の攻撃を防いだな」
ASHは美しい唇を歪めて笑った。衝撃波を敵に送り込み、返す刀でASHは鶴姫を襲った。それを咄嗟に鶴姫は防いだ。一歩遅ければ鶴姫は倒されていたであろう。
「所詮、ヒトガタはヒトガタだ」
ASHは蔑んだ目で鶴姫を見た。そのASHに対して鶴姫は無言のままで背を向ける。そして歩き出した。もし、その背にASHが攻撃を仕掛ければすぐに反応をする用意はある。鶴姫の背には殺気が宿った。しかし、ASHの攻撃はなかった。
「私は、あなたにとって所詮ヒトガタかもしれませぬ。しかしそれは私が望んだことではない。ただ私はその運命を受け入れるしかないのです」
鶴姫は振り向かぬまま声を発した。自分でも驚くほど無機質な声色だった。その鶴姫の言葉にASHは何も反応を示さなかった。ただ、背後の気配でASHもまたその場を去って行ったことを鶴姫は感じた。この輪廻のような戦いがいつまで続くのか。鶴姫は暗澹たる想いで足をすすめるのであった。
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