冥界と地上の間に緩衝帯をつくるにあたって、安倍晴明は己一人の力では無理であることを悟った。より強力な霊力を持つ者。さらに自分に対して憎悪や恨みを持ち、さらに自分を超える力を持つ者が必要であると考えた。
晴明は危険を冒し、冥界に潜り込み、その資格を持つ者を探し出した。その者の名は蘆屋道満。かつて晴明の好敵手であった陰陽師である。
当時、朝廷の高級官僚として、陰陽寮を束ねていた晴明に対して、道満は在野の陰陽師であった。野心を持つ道満は、朝廷の最高権力者である藤原道長の暗殺を請け負うが、その目論みを晴明に見破られ、対決の末敗れ、播磨の国に流された。晴明は道満の能力を評価し、その力を朝廷のために生かそうと考えたが、道長はそれを許さず、追手の軍勢を差し向けて道満の家族もろとも殺害した。その時、追手は晴明の指示であるとして罪を被せた。道満は全身に矢を浴びながら、憤怒の表情で息絶えたという。
晴明は、そのことを知り、道満のために祈祷を捧げたが、道満の呪いにより、妻を失った。二人の間には超え難い因縁があったが、晴明はあえてその道満を必要としたのである。
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