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ペルセフォネの動向


ユリドの報告にペルセフォネは頷いた。

「今しばらく魔界に留まるのではないかと」

ユリドの言葉にペルセフォネは首を傾けた。ここしばらくでペルセフォネとASHの立場は大きく変化した。そもそも、冥界第三帝国の後継者は、ほぼスキピオヌで決していた。それは、スキピオヌの母であり、今や冥界第三帝国の主力部隊を率いる伽羅奢と、姉であり、その戦闘能力と軍才で、冥界にとっての最重要難題であった魔界の崩壊を成し遂げたASHの功績によるものであった。ASH、スキピオヌとは腹違いの姉であるペルセフォネは、冥界の一師団長に甘んじていた。しかしながら、ヒトガタと冥界の神の間に生まれたハイブリッドであるスキピオヌを正当な後継者とは認めたくない一定の勢力が冥界第三帝国の中にはある。その勢力にとってペルセフォネは希望であった。

「伽羅奢にうまくやられたな」

ペルセフォネは美しい唇を歪めた。

スキピオヌの魔界での失策をあげて、後継者の座からの追い落としはかった。その策を練ったのは目の前にいるユリドである。

「まさか、ペルセフォネ様の地位をあげることで動きを防ぐとは思いませんでした」

ユリドの策でASHも一度はその責任を追求され身動きが取れなくなった。ペルセフォネは、その間隙をついて、魔界に赴き、スキピオヌを倒す腹づもりであった。しかし、伽羅奢は、ペルセフォネを冥界第三帝国の参謀総長に任命することで、魔界に関わることを防いだ。ペルセフォネの昇格は、彼女を支援する勢力にとっては重要なことであり、ペルセフォネにそれを断ることはできない。ペルセフォネがその仕事に追われる間、ASHは冥界第三帝国を抜け出し、魔界の残存地に入りスキピオヌを救ったのだ。

「ユリド」

ペルセフォネはユリドを見た。

「しばらく私の後を任す。私は自ら魔界に赴く」

ペルセフォネはそう言い残すと、ユリドを残し、去っていった。



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